チーム
2023-24Vリーグ
開幕直前インタビュー/
ティリ・ロラン監督
2023年10月20日


世代交代の昨シーズンを「誇りに思う」
昨シーズンは非常にチャレンジの多い1年でしたが、私は選手たちを非常に誇りに思っています。その理由は特に前半、清水邦広選手の手術など、多くの困難がある中でもポイントを大きく失うことなく勝つことができたこと。そして後半になり、大塚達宣、エバデダン・ラリー、西山大翔、西川馨太郎、垂水優芽といった若い選手も加わり、全員でエキサイティングしながらチームをつくっていったこと。選手22名で練習する大変さはありましたが、全員を3チームに分け、それぞれすべてが対戦するようにローテーションしながらゲーム形式の練習をして、選手たちは思い切りプレーしました。リーグ優勝をすることはできませんでしたが、3位という数字、結果も非常に誇らしく思っています。
若手選手たちは非常にポテンシャルが高く、私が求めるものに対する理解、飲み込みも早い。彼らがより伸び、成長するための練習方法を探すのは非常に楽しい仕事です。何より見ていてワクワクします。ですが、まだ彼らは若さが全面に出て、いい時は非常に素晴らしいが崩れると大きく崩れる不安定さもある。その波を少しでも無くすべく、技術の面に関して、まずパスは持っているクセをなるべく崩すこと。そしてアタックは助走の角度をつけることや、状況に応じたスパイクを選択すること。
これまで大学生の中では、彼らの高く、力強いスパイクは武器で簡単に機能していたことでしょう。しかし、Vリーグでそうはいかない。強い選手ばかりの相手にいい状況で攻撃ができるわけではありません。そんな悪い状況でも決められる確率を増やすためには、まず相手を崩し、様々な打ち方を学ぶ。そうなれば必然的にミスも減り、今以上にレベルの高い選手へと成長を遂げていくはずです。もちろんその学びには多くの時間が必要です。そして、最も大切なのは量を増やすのではなく、質の高い練習をより多く続けることです。
日本では反復練習を重んじ、それを耐えるメンタルや努力が必要と捉えられがちです。しかし、本当に大切なのは頭を使い、状況に応じたプレーをすること。毎回100%の力で思い切り打つのではなく、フェイントやプッシュなどをいろいろと織り交ぜ、最終的に1点を決める。その1本を決めるために何をするか、常に考えてプレーすることが一番大事なのです。もちろん努力は大切ですが、ただ努力するだけではなく、プレッシャーがある中でもリラックスして、次のプレーを自分で分析する。それが一番難しい。緊張、プレッシャーのかかる中でどれだけ頭と身体が動くか。それを学ぶのもとても大切な作業です。50本のパスを受ける中で10本Aパスを返すのと、20本のパスを受ける中で10本Aパスを返す。どちらが効果的かを考えれば当然後者です。時間をかけるからといってただ量だけを増やすのではなく、目的に応じて適した練習をする。彼らはまさにその過程にいて、私が求めることをたくさん理解してくれています。これからもより多くの時間を投資して、成長を見ていくのは非常に楽しみです。
大切なのは、「チームで戦うスピリット」
今シーズン、我々にはジェスキー・トーマス、西田有志、山本智大という新たな戦力が加わりました。現段階で彼らはトップレベルの選手であり、パンサーズには山内晶大、清水邦広、深津英臣、仲本賢優、新貴裕、兒玉康成など豊富なキャリアを持った選手たちも在籍しています。花にたとえるなら美しく咲き誇る花がたくさんいます。そして、間もなくその花を咲かせようと実りを見せている大塚、エバデダン。そしてこの先大きな花を咲かせるべく、今は根を張りつぼみを膨らませようとしている垂水、西川、西山、伊藤友健、中村駿介、本当に楽しみで面白い選手ばかりが揃っています。
とはいえバレーボールは個人競技ではなくチームスポーツ。まだ完全にお互いを熟知しているわけではないので、お互いを知り、本当に信頼し合ってプレーを完成させるには時間もかかるでしょう。どれほどの戦力があろうと、勝つためには様々な運も味方する。ケガをしないこと、審判のジャッジ、ネットに入ったサーブが偶然入るシチュエーションなど。そしてその運を手繰り寄せるのは練習です。
そしていいチームをつくりあげるためには、互いをリスペクトし合うこと。優しくし合えること。なぜか。チーム状況が悪い時こそチームで戦わなければならないからです。優勝するチームにはマジカルな雰囲気がある。それは多くのチーム、クラブで監督を務めた私の経験であり、それこそが楽しさです。そのために必要なのは互いが互いを思いやる。まさしく、チームスピリット。どれほど個の力が揃っていてもチームで負けたということは、誰かのせいではなく全員に責任がある。パンサーズには、そのスピリットがあります。
バレー熱が高まる今こそ、パンサーズのエナジーを共に
パリ五輪予選で、日本代表は見事にオリンピック出場権を獲得しました。
日本代表の戦いぶり、チームスピリットは本当に素晴らしいものでした。もちろん個人に目を向ければ優れた力を持つ上手な選手が揃っていますが、彼らは常にチームとして戦っていた。五輪予選はもちろん、ネーションズリーグ、アジア選手権も本当に楽しんで見ていましたし、東京オリンピックの後、すべての国を見ても日本は最も向上しているチームであり、選手1人1人も経験値を重ね、大人になったチームです。
それはきっと、若い頃から共にプレーをして、お互いを分かり合って、全員で戦っているからではないでしょうか。そして五輪予選を通じてまた経験値を高め、2024年のパリオリンピックでメダル獲得ができる力を持ったチームです。
そしてアジア大会に出場した日本代表Bチームも素晴らしかったです。開催国の中国、イラン、カタールなどナショナルチームのトップチームが参加した中、彼らは3位に入り、銅メダルを獲得しました。この結果はまさに、日本のバレーボール自体が非常に高いレベルへ達していることの現れでもあります。そして、日本のバレーボールが非常にいい方向へ進んでいることに、我々パンサーズも大きな刺激を受けています。
我々のチームには、代表チームでも活躍した多くの選手が揃っています。そしてクラブとして、来年から始まる新たなリーグへ向け、日本のバレーボールをより強くするために全員が動いています。その力が結集すれば、非常にいいチャンピオンシップになる。そして観客の方々にも、いい試合をたくさんお見せすることができるのではないでしょうか。
何より日本が幸せなことは、フランスならば代表選手の殆どがフランス以外の国でクラブシーズンを戦っているのに対し、日本代表選手の多くが日本のリーグで戦っていることです。彼らの姿、素晴らしいプレーを直接国内で見ることができるのはとても素晴らしい環境です。そしてそのような選手たち、たとえば我々のチームの西田選手のように非常にレベルの高い選手と対戦することで、相手チームの選手、特に若手選手にとって成長につながる機会となるはずです。
会場に来て、選手たちのプレーを見れば彼らが跳ぶ高さや打つボールの力強さ、パワー、スピードに驚かされるはずです。そして120キロを超えるようなサーブを受ける姿を見て、叩きつける音を聞くだけでも、誰もがびっくりするでしょう。そして二度、三度と足を運ぶうちにバレーボールがどれほどメンタル、考えることを重んじるスポーツであるかを理解していただけるはずです。いろいろな想像、戦略を考えながらバレーボールを楽しんでください。
そして何より、パンサーズの選手たちがコートに入る瞬間、どれほどのスピリット、エナジーを発揮しているか。ぜひ会場で見て、確かめて、私たちを応援して下さい!
(文:田中夕子)
