チーム
2024-25 大同生命SV.LEAGUE MEN
開幕直前インタビュー/
ティリ・ロラン監督

2024年10月11日

ティリ・ロラン監督インタビュー ティリ・ロラン監督インタビュー

ただ1試合を除き昨年は「完璧なシーズン」

昨シーズンは最後まで完璧なシーズンでした。
悔やまれるのはただ1試合、Vリーグのファイナルマッチです。
レギュラーラウンドを振り返れば、すべての選手がコートに立つたびにチームの勝利のために、高いエナジーを持っていいプレーをした。リーグの終盤には西田有志選手とトーマス・ジェスキー選手がケガで出場できない試合もあった中、西山大翔、仲本賢優選手が大活躍をしてくれた。
経過をたどれば、リーグ戦中に開催された天皇杯では5大会ぶりのチャンピオンになりました。Vリーグも含め、チームとして戦った完璧なシーズンでしたが、だからこそ最後の最後、Vリーグの決勝で敗れたことが、本当に悔しかった。しかし、リーグを終え多くの選手が日本代表の活動でチームを離れている間、シーズン最後の黒鷲旗では残るメンバーがまさに総力を尽くし、決勝進出を果たした。惜しくもフルセットで敗れましたが、素晴らしいパフォーマンスで締めくくった。戦い抜いたチーム、選手たちを私は誇りに思います。

次のページをめくるためのリスタート

日本代表に選出された選手たちが不在の中、我々も新たなスタートを切りました。夏場は選手の数が少なく、非常にハードな日々を過ごす中、中村駿介、西川馨太郎、小宮雄一郎選手など、それぞれが個人の課題と向き合い、彼らが果たすべき仕事をやり遂げました。そして今シーズンは、#21永露元稀という新たな戦力も加わりました。彼は昨シーズンまでウルフドッグス名古屋でセッターとしてトスを上げ続け、リーグ優勝も経験した選手です。対戦相手として見ていても、アウトサイドへのトスやミドルの使い方も非常に秀でていた。今、共に練習をするようになってからも彼の素晴らしさは変わりません。
とはいえ彼がこれまで上げてきた選手たちと、これからトスを上げる選手たちは違う。たとえばオポジットも、西田有志選手はクレク・バルトシュ選手(元 ウルフドッグス名古屋)ではなく、トーマス・ジェスキー選手は高梨健太選手(ウルフドッグス名古屋)ではない。試合を重ねながらどう調整していくか。彼に与えられた課題ではありますが、新たなチャレンジをして壁を超えるチャレンジには時間がかかるものです。永露選手は新たなアクセントを加えてくれる選手となることでしょう。
夏場にそれぞれの課題克服に向けて取り組んできた選手もいれば、日本代表で世界と戦って来た選手もいる。Vリーグを戦うための準備は非常に限られた時間で、全員が顔をそろえたのは開幕5週間前でした。
この時間を短いと取るか。長いと取るか。捉え方はさまざまですが、遡れば昨シーズンはリーグ開幕前に全員が集合したのはわずか1週間前です。しかし、今シーズンと昨シーズンを比べれば1週間で開幕戦に挑まなければならない昨シーズンのほうが、心も身体も非常にポジティブな状態で入ることができました。
なぜか。直前までパリ五輪予選に挑んでいた日本代表選手たちが、見事な形でパリ五輪出場を決め、その勢い、高揚感を持ってチームに戻り新たなシーズンに臨んでいたからです。
しかし今シーズンはどうか。パリ五輪を戦った選手たちは、戦いを終え、しばしの休息を経て、ストレスやプレッシャーを一気に解き放った状態でチームに合流しました。リラックスする時間を得られたのは確かですが、その前に、彼らはパリ五輪の最後に非常に悔しい負け方、終わり方をした。その状態からリスタートするのはとても困難な作業だったことでしょう。
今から8年前、フランス代表監督として臨んだ2016年のリオデジャネイロ五輪で、私にも同様の経験があります。予選を終え、決勝トーナメントへ。フランス代表はとてもいい状態で臨んでいました。しかしながら、ブラジル代表に準々決勝で負けてしまった。第1セットを取られながらも第2セットを取り返し、最後の第4セットはリードされた状態から終盤に追いついたにも関わらず、2点差で敗れた。その瞬間、持っていた夢も、すべてが崩れてしまった。失望を味わいました。
立ち直り、次に進むには時間がかかりました。でも必ず前を向く時が来る。フランス代表がその経験を糧としたように、日本代表で戦った選手たちにもパリ五輪でのトラウマとも言うべき経験も、きっと未来につながる武器となるはずです。彼らがどれほどの思いを持って戦ったか。その重さがわかるからこそ、戦いを終え、チームに合流した当初は優しく、あえて言葉をかけずに見守りました。今は彼らに対しても少しずつ声をかけ、プッシュしています。なぜなら彼らはまた、新たなシーズン、新しいチャレンジのために次のページをめくらなければならないからです。

大阪ブルテオン最初のシーズンで最高のフィナーレを

SVリーグという新たなリーグの始まりを、大阪ブルテオンという新しいチームで迎えるシーズン、我々はレギュラーラウンドで44試合を戦います。これは非常に長く、とても難しい挑戦です。正直に言うならば、どう戦えばいいのか。今はまだアイディアが浮かばないほど困難な戦いです。
当然ながら、コートに立つ6人が最初から最後まで同じメンバーで戦うことなどできないはずです。そして長いシーズンの中にはアップダウンもあるでしょう。最後までベストな状態で乗り切るためには、チームとして、スタートの6人だけでなく次に出場する選手たちがどれだけ活躍できるか。それが大きなカギになることでしょう。
ナショナルチームのように、1つの大きな大会をターゲットにすればいいのではなく、我々はリーグと天皇杯、二度、ピーキングを合わせなければならない。そしてリーグ戦で上位に入ればセミファイナル進出が決まる。ファイナルにつながる戦いでもあるため、1試合1試合も非常に重要です。
選手たちには6週間ごとに分けて目標を設定し、1つずつ、今はこの目標に進んで行く、と具体的なプランを伝えています。その過程で、コンディションを見ながら練習をハードにしたり、少し休ませたり、コントロールも必要です。
選手個々のポテンシャルは申し分ない。今はまさにチームビルディングの最中ですが、安定すればきっと昨シーズン以上の力を発揮する、強いチームだと確信しています。だからこそ今、我々はハードな練習を重ねています。
SVリーグは今シーズン、トリー・デファルコ選手、クリスティアーノ・ルカレッリ選手(ともにジェイテクトSTINGS愛知)、ニミル・アブデルアジズ選手(ウルフドッグス名古屋)、世界を代表する外国籍選手が揃い、我々のチームも昨シーズンからプレーするジェスキー・トーマス選手、そして#81ロペス・ミゲル選手が加わった。さらに西田有志、山内晶広、山本智大選手といった我々のチームの選手だけでなく、髙橋藍選手(サントリーサンバーズ大阪)、宮浦健人選手(ジェイテクトSTINGS愛知)といった海外で経験をしてきた選手たちも日本で戦う。もともと高いレベルの日本選手の中に彼らが加わることで、世界でもトップリーグの1つとも言うべき、非常に魅力的で特別なリーグとなるはずです。
何より、私自身も新たなシーズンの始まりをとても楽しみに感じています。初めて監督に就任した4年前はコロナ禍でさまざまな制限がありましたが、解除されてからは年々観客の数、ファンの方々の数が増え、昨シーズンはすべてのホームゲームが完売しました。
SVリーグは世界のトップリーグを目指して、我々大阪ブルテオンだけでなく、全クラブが同じ方向に向かって、そしてすべての選手たちが「もっとうまくなりたい」と同じ目標に向かって戦うとても素晴らしいリーグです。我々の目標は、その素晴らしいリーグの最後に勝つこと。昨シーズンは、苦しい時も選手たちが最後までバレーボールを楽しみながら互いをサポートして、1つ1つの練習や試合に臨み、次の試合で勝てるようにと準備を重ねてきました。
今年は東京、大阪で開幕戦を迎えます。どんなスタート、フィナーレを迎えるか。昨シーズンのリベンジを果たすべく、たとえどんな困難があろうと、最後に勝って終わることができれば最高です。大阪ブルテオンとしての初めてのシーズン、最高のフィナーレを楽しみにしていて下さい。

ティリ監督のサイン