チーム
イタリアセリエA チステルナ
垂水 優芽選手インタビュー
「イタリアで、もっと強くなる」

2025年4月30日

垂水優芽選手

「厳しい環境で勝負したい」決意新たにイタリアへ

チステルナの観客が一番沸いたのは、この男が登場した時だった。

2025年2月22日、チステルナ対ミラノ。2セットを失ったホームのチステルナは第3セット中盤、13対11の場面で動いた。

「ユウガ、タルミ!」

名前がコールされ、垂水優芽がコートへ。会場からは大きな拍手と歓声が沸き起こる。

「めちゃくちゃ嬉しかったです。活躍して、サポーターの方々にまた応援してもらえるようにもっと頑張ります」

大阪から世界へ――。

垂水は、新たな挑戦の最中にいる。なぜ海を渡ろうと決めたのか。そして、どんな未来を目指すのか。
イタリアでの日々と、バレーボールにかける思いを存分に語った。

  • 写真:ボールを持ってコートに座っている垂水選手
  • 写真:練習中の垂水選手の様子

イタリアに来たのは昨年(2024年)8月、こちらに来て半年以上が過ぎました。

  • ※インタビュー:2025年2月中旬

生活には少しずつ慣れてきましたが、言葉はまだまだ。特に練習中、監督から言われたことに対して、何を言っているのかはわかっても自分の意見をとっさにイタリア語で返すことができない。日本語ならば即座に言えることが、なかなか言えないというのはもどかしくもありますが、イタリアならではの自由さもある環境で楽しくバレーボールと向き合っています。

初めて海外へ行きたいと思ったのはいつ頃だったか。学生時代やパナソニック パンサーズ(現 大阪ブルテオン)へ入団した時もどこかでぼんやり思っていたのは確かですが、具体的に動き出したのは昨シーズン終盤を迎える頃でした。

学生時代から憧れて入ったパナソニック パンサーズで、ポジション争いが厳しいことも理解していましたが、それでも実際、試合へ出場する機会がなかなか得られず、今季(2024-25シーズン)からはSVリーグとなり、外国籍選手枠も増えることが決まっていた。1人の選手として、本当にこのままでいいのか、と考えたことが海外移籍へのきっかけでした。

出場機会を求め、最初は韓国Vリーグのトライアウトを受けようと考えていました。日本人選手も多く受けて実際にプレーしている安心感もあり、試合に出られる可能性も高いように思えた。でも、(ロラン)ティリさんからは「海外へ行くならばもっとレベルの高いところへ行ったほうがいい。若いうちに高いレベルの中でプレーすることは必ずいい経験になる」と後押しされ、エージェントなどを通じてチームを探してもらった結果、イタリアセリエAのチステルナにたどり着いた。自分が通用するのか。不安がないわけではありませんでしたが、たとえ試合に出る機会が少なかったとしても、新しい環境で勝負することはきっとプラスになる。そう思い、挑戦することを決めました。

  • 写真:試合中の垂水選手の様子
  • 写真:試合中の垂水選手の様子

不安を抱きながらも決断できた。その理由の1つに、僕がパナソニックに在籍(社員)をしている、ということもありました。入団する際、社員契約にするか、プロ契約にするか。それぞれの考えや描くビジョンによって決めるのですが、当時はまだ、自分の将来に対してもはっきりしたイメージがなく、パナソニックという素晴らしい企業に入社するということのほうが僕にとっては魅力的でした。

とはいえ選手として契約していただいている以上、海外へ行きたい、と言えば契約内容も変更しなければならないであろうケースのほうが多いはず。もしかしたら、契約自体も終了する可能性もあると思いますが、僕の場合は非常に恵まれていました。今現在は、大阪ブルテオンを運営するパナソニック スポーツ(株)にサポートいただき、変わらず自分が望んだ海外でのプレーを実現することができています。アスリートにとってはケガもつきもので、飛び込んだからといってうまくいくとは限らない。その状況でも恐れることなくチャレンジする後押しをしていただき感謝しています。

目標は2028年のロサンゼルス五輪出場
「日々自分の力を高められるように」

試合は基本、週に一度。完全ホーム&アウェイで土曜か日曜に行われ、イタリア国内は原則バス移動のため、対戦相手によっては帰宅すると翌朝になっていることもある。

恵まれていた日本での環境とは異なり、食事や掃除、洗濯など日常の家事も自ら行い、練習になれば少数精鋭のプロが集う環境でしのぎを削る。

チームメイトとのコミュニケーションは英語がメインだが、食事の際や練習後のファンサービスでは流暢なイタリア語を披露する場面もあり、すっかりイタリアでの生活、チステルナの街に溶け込んでいた。

セリエAもプレーオフに突入、いよいよ佳境をむかえる中、垂水が抱く決意とは。

自分でも少し意外でしたが、チステルナは非常に練習量が多い。ティリさんが短時間で質の高い練習を好む監督だったので、よけいにそう感じるのかもしれませんが、基本的に試合翌日のオフ以外はすべて練習。週5日のうち3回は午前と午後の二部練習で、残る2日も必ずボール練習が組まれる。実践形式の練習がほとんどなので、1回の練習時間は2時間程度、それほど長くありませんが、ゲームライクな練習を日々重ねてきました。

写真:試合中の垂水選手の様子

イタリアセリエAは日本のSVリーグ以上に外国籍選手が多い(オンザコート4名まで可)ため、チステルナも外国籍選手が多く在籍しています。セッター、リベロ、はすべてイタリア人選手ですが、アウトサイドヒッターは全員外国籍選手で、日本、トルコ、スペイン、ベネズエラとさまざま。その他にもオポジットとミドルブロッカーにフランス、オーストリア、セルビアの選手が在籍するチームですが、練習はイタリア語で進む。聞き取るだけでも必死です。

レギュラーラウンドの後半から少しずつ出場機会も得られるようになり、1月18日のパドヴァ戦ではMVPにも選出された。監督からはレセプションを含むディフェンス全般、スパイク、ブロック、サーブ。すべてのプレーにアドバイスを受けています。特にスパイクはブロックに止められることを嫌がるので、「スパイクは落とさず奥を狙ってアグレッシブに。ブロックをはじき飛ばせ」と言われます。期待されているとプラスに捉えていますし、試合へ出場する機会を得られたことは、自分の中で少しずつ自信にもなっているし、チームの信頼を得られているなら嬉しいです。

イタリアではペルージャに石川祐希選手、ミラノに(大塚)達宣、自分だけでなく他のクラブでプレーし、活躍する日本人選手の存在はとても刺激になります。アウェイのミラノ戦には出場することができませんでしたが、(2月22日の)ホームでのミラノ戦は途中出場して、達宣と一緒にコートへ立ち、ネットを挟んで戦うことができた。同じ洛南高校でやってきた同級生とイタリアで戦えるのはとても嬉しい経験でしたし、達宣が頑張っているのを見れば、自分も負けずに頑張ろう、と思う。自分だけでなく達宣も同じだと思いますし、同じ洛南高校の同級生で言えばギリシャでプレーする(山本)龍も海外でプレーする選手なので、連絡を取り合って些細なことを話したり、バレーボールのことが話せる仲間がいることも支えになっています。

写真:試合中の垂水選手の様子

プレーオフは短期決戦。1つでも多くの試合に出場して結果を出したいと思いますし、さらにその先を見れば、3年後には2028年ロサンゼルスオリンピックが開催されます。海外へ行きたい、高いレベルでプレーして自分を成長させたいと思う一番の理由が、日本代表としてオリンピックに出場したいということでした。いうならば、その目標が達成できるまで日本に帰る気はない。それぐらいの気持ちで来ているので、少しでも成長できるように。日々、自分の力を高められるように頑張ります。

垂水選手のサイン