チーム
2025-26 大同生命SV.LEAGUE MEN
開幕直前インタビュー/
サムエルボ ヘッドコーチ

2025年10月22日

サムエルボ ヘッドコーチ 2025-26 大同生命SV.LEAGUE MEN 開幕直前インタビュー

日本バレーは「開かれた世界になった」

私が日本でバレーボール選手としてプレーしたのは20年前。2005-06の1シーズンでしたが、再び日本で、大阪ブルテオンのヘッドコーチとして指揮を執ることを非常に光栄に思います。
20年前と比較し、日本のバレーボール界は大きく変化しました。外国籍選手やヘッドコーチを迎え入れる環境が整い、非常に開かれた世界になった。そんな印象を抱いています。同様に、日本選手が海外リーグでプレーすることも当時はほとんど見られませんでしたが、今は海外でプレーする選手も多くいる。新しい変化をとても歓迎すると共に、日本独特のバレー文化、伝統も引き継がれ、ミックスされているのも素晴らしいことです。
現役選手としてだけでなく、ナショナルチームのヘッドコーチとして日本を何度も訪れていますが、今、バレー界全体で非常にいいムーブメントが起こっているのを実感しています。日本国内でバレーボールが重要なスポーツとして認識され始めている時に大阪ブルテオンのヘッドコーチに就任する。バレーボールに関わる1人の人間として、非常に重要な責務を担っていると思いますし、チームスポーツとしてバレーボールが持つ力、魅力は素晴らしいものだと伝える任務が私にはあります。
バレーボールという競技は非常に特殊で、誰か1人がボールをキープしてつないでいくのではなく、一瞬のタッチでつないでいくスポーツです。その成功のために、チームとしてどう取り組み、向き合うか。バレーボールの試合だけでなく、これは日常生活にも共通します。ビジネスのフィールドにおいても、成功のためにどう振る舞うか。その選択にも通ずるヒントがある。だからこそ、私はバレーボールが素晴らしいチームスポーツであることを広める価値があり、そのことがとても重要な責務であると考えています。

大きな目標を成し遂げるためには1人1人が最善を尽くすこと

これまでポーランドやロシアなどさまざまな国のリーグにヘッドコーチとして携わりました。どの国、場所でもバレーボールはバレーボール、その点において違いはありませんが、日本の環境は非常に素晴らしい。大阪ブルテオンのコーチ陣も、私が要求するたくさんのことに対して、しっかり責務を果たしてくれています。“年功序列"という日本独自の文化からも、欧州の人間として、学ぶべき部分が多々あります。
ただし、選手たちに誤解してほしくないのは、彼らはヘッドコーチである私や、コーチ陣のためにプレーするのではなく、彼らは彼らのためにプレーしてほしい、ということです。
ヘッドコーチとして、私は彼らのこれまでの背景や個性を理解して、把握しながら、彼らが成し遂げたいと願う目標を叶えるために舵を切るのではなく、ガイドする。選手もスタッフも、チームとして叶えるべく大きな目標を成し遂げるためには、1人1人が最善を尽くすことが重要です。「上達したい」と願い、努力する選手たちの背中を押すことができれば、ヘッドコーチとしてこれほどの喜びはありません。
長いシーズンを戦う中で、チームの中では誰がこのチームで主要となる選手なのか。試合に出る選手は誰か。時間を重ねるうちに、少しずつ、選手たち自身にも見えてくるかもしれません。ですが私は、いかなる時でも選手たちに対して、求めるスタンダードは同じです。チームの主軸を担う選手であろうと、控え選手であろうと基準は一緒で、リクエストすることも同じ。常に平等です。
もちろん人によって個性があるので、コミュニケーションの取り方や対応の方法は変えて接します。この作業はコーチとして最も難しい部分でもありますが、同時にとても楽しいものでもある。なぜなら、誰一人同じ個性を持った人間がいないのだから、その人それぞれにどう対応するか。それを考えるのが私の仕事だからです。
若い選手たちは時々「若いから」と年齢を理由にすることがあります。そしてベテランの選手たちは「もう〇歳だから」と同じように年齢を理由にして、できないことに理由をつくろうとすることがあります。でも私から見れば、できる、できないに年齢など関係ありません。自分が心から願えば、上達することができるから。大切なのは、本当に心から願っているかどうかです。
もしも明日、富士山へ登りたいと思ったらどうするか。何が何でも本気で登りたければ、どんな手段を使ってでも本気で富士山に登るための方法を調べるでしょう。「そんなの無理だよ」と諦めてしまえばそれで終わり。簡単にできないとわかっていることだとしても、信念次第で道は開ける。その信念の有無こそが、チームとして、選手として成功する道筋となるはずです。
選手を知るためには、まず私自身のことを知らなければなりません。強みや弱み、そして私という人間の個性。自己理解が低い人間が、相手を理解できるでしょうか。できるはずがありません。私という個人が、選手1人1人という異なる個人を見て、接する。そうやって共に戦いながら、チームとして時に難しい課題と直面した時、どんなケミストリーが生じるか。その時こそが、私たちは同じ“チーム"であることを実感できるのではないでしょうか。

厚みの増したチームで「課題をクリアしながら成熟していく姿を見てほしい」

大阪ブルテオンで(前ヘッドコーチのロラン)ティリさんが築いてきた5年間があり、私はティリさんの後任としてヘッドコーチに就任できたことを非常に光栄だと思っています。これまでの5年間積み上げてきたものの中から引き継ぐところ、そして新しく変化させること。ヘッドコーチの私だけでなく、今シーズンは新たな選手も加わり、また新たなチームとしてスタートします。
昨シーズンの試合も7~8割ほどを見ましたが、まず大きな変化はチームのファーストセッターが変わることです。(アントワーヌ)ブリザールが加わり、チームのバランスはどう変化するのか。ブリザールだけでなく、中村駿介も非常にいい準備をしてここまで来ていますので、融合がとても楽しみです。
セッターだけでなく、アウトサイドの選手は誰が入るのかも注目してほしいですし、正直に言えば私自身もまだ、誰が入るのか、どんな組み合わせになるのかわかりません。そしてこれは非常に素晴らしいことでもある。なぜなら、それだけ選手層が厚いと言えるからです。アウトサイドのみならず、他のポジションもいい意味でポジション争いをして、チームは成長しています。
テクニカルな面で言えば、まずはサーブの強化。特にスピンサーブをどんどんアグレッシブに打ってほしい。素晴らしいサーブを打つ選手がブルテオンには多くいますので、彼らのサーブを武器に、ブロックディフェンスも強化したい。アタックのコンビネーションもスタイルが変化する中、どんどん課題をクリアしながら成熟していく姿をぜひ見ていただきたい。
そして何より大切なこととして私が伝えていることがあります。『誰が出ようと、どんな時でも絶対に諦めない』ということです。たとえチームが負けたとしても、その結果に言い訳するのではなく、どうやって打開していくかを常に模索し続けながら、私たちは戦います。
そのために、私からのお願いは1つ。とてもシンプルなメッセージです。
我々の試合を見に来て、私たちをサポートして下さい。
私たちにエネルギーを与えて下さるのが応援して下さる皆さんです。皆さんが会場に来て、私たちを後押ししてくれることで、我々は確実に数パーセントのエネルギーが補われます。試合を見ていただければ私たちは日々生き抜くためのエネルギーとなる楽しさや喜びをお伝えします。
皆さんが来てくれるのを、心から待っています。

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